Illuminate Journey – 4

 二人の少女がCafé Paradeの前で足を止める。
「ねえ、ここじゃない?」
 スマホの地図を見ながら立ち止まった少女は、腰まで伸びた深いすみれ色の髪を、白いリボンでひとつにまとめている。
「でっっっか! 城じゃんこれ」
 そう反応したもう一人の少女は、青い裾カラーが入った金髪のショートヘアで、海のような瞳の色をしていた。
 入口のドアには、「春風千晴 春のミニライブ」と書かれた小さなポスターが貼ってある。
「もう時間無いから早く入ろ」
「えー、なんか緊張してきた、宇宙こすも先入ってー」
「レトラが誘ったんじゃん」
 宇宙と呼ばれた少女はそう言い返しながらも、Café Paradeの重たい扉を開ける。
 薄暗い照明で照らされた店内は、まもなくステージの演奏が始まることを物語っていた。店内の前の方に設けられた小さなステージの上には、スポットライトに照らされて二人の少女が椅子に座っている。
「いらっしゃいませ、ご予約の方ですか?」
 二人の姿に気付いた巻緒が声をかける。
「はいっ、えっと、上水流です」
「かみずる様……ありがとうございます、お二人様ですね? ご案内します」
 巻緒に連れられて、二人は店内のちょうど中央あたりにあるテーブルへ案内される。ステージの上では、スポットライトに照らされたアーティストが挨拶を始めていた。
「こんばんは、春風千晴です。今日もたくさん聞きに来てくださって、ありがとうございます」
 二人はステージの上で話し始めた少女に目を向けながら、案内されたテーブルに座る。
「シャンパンありますー?」
「あるわけないし。すみません、この人は無視してください」
 傍若無人なふるまいをするレトラを宇宙が抑える。それからドリンクを頼んだ二人は、あらためてステージや店内を見回した。
「良い感じだね」
「ね」
そう言い合った二人は、ステージの上に目を向ける。
「そして、今日も大切なスペシャルゲストに来てもらってます」
 千晴がそう言うと、そばで座っていた少女が立ち上がった。砂糖のように白い毛先を持つ赤い髪が揺れる。
「みなさん、こんばんは」
 あたたかい拍手に包まれて、少女が頭を下げる。にこりと笑った可愛らしい笑顔に、レトラも宇宙も心を奪われた。
「あなたの心、灯しますっ。灯里愛夏です」


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